その6

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衣装チェンジ。白いシャツにジーンズと言う極めてラフなスタイル。というか、その前の衣装もよく見たら十分ラフか。
しかし、この後姿。ジーンズの裾は地面についてるし、シャツのソデはボタン留めてないし、襟の状態及びシャツの捲れ具合から考えるとシャツの前もきちんと留めてないし、ラフと言うよりだらしないと言ったほうが正解だろう。
実際こんな人が自分の前を歩いていたら、「だらしねえなあ・・」とあきれてしまうだろう。さらに、一体親はこの娘にどんな教育を施してきたんだと憤慨しさえするかもしれない。そして、ついには、このだらしない格好をした娘は一体どんな顔をしているのだ、と次期PTAは任せとけ的な勢いでツカツカと彼女の前に立ちはだかりその顔を覗き込んでしまうかもしれない。「あんたどこの娘だ?」と尋ねてやろう、という意気込みを胸に秘め。
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そして絶句。「・・・美しい!」。その造詣のあまりの美しさに呆然と立ちすくんでいると、その娘−吉澤ひとみ−は「・・・なんですか?」と訝しげな表情で尋ねてくるかもしれない。そして彼女が見出すのは、我にかえり言葉に詰まって戸惑う哀れな男の姿だろう。
しばしの沈黙の後、その男は苦し紛れにこう切り出すのだ。
「あ・・あの・・・。」
「はい?」
「一つお尋ねしてもいいでしょうか?」
「え?何でしょうか?」
「そ・・そのシャツの構造はどうなっているんですか?」